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欠損金の繰戻しによる還付請求※欠損金の繰越控除との違いは?
2016年10月25日【平成21年度税制改正での復活した欠損金の繰戻し還付制度】
法人税の欠損金の繰戻し還付制度とは、前期は黒字だった法人が、経営悪化などで当期赤字になってしまった場合、前期に納税した法人税の還付を受けることができる制度のことをいいます。
この欠損金の繰戻し還付制度は、平成4年4月1日以降に終了する事業年度について適用が停止されていましたが、全世界的な金融不安や景気後退を受け、中小企業の円滑な資金繰りに資するために、平成21年度税制改正において復活しました。
この制度は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合(以下、この事業年度を「欠損事業年度」といいます。)において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)に繰り戻して法人税額の還付を請求できるというものです。 |
【適用要件】
1.還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。 2.欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していること。 3.上記2の確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。 |
【欠損金の繰越控除との違いは?】
欠損金の繰越控除の制度は、知っている方も多くいらっしゃると思います。よほどの優良会社でなければ、一度くらいは使ったことがあるでしょう。 中小企業の社長さんからすれば、おなじみかもしれませんね。
簡単にいえば、赤字がでた事業年度には税金を払いませんが、その赤字を翌期から9年間まで繰り越して、翌期以降の黒字と相殺して、税金を計算できる制度です。 計算された税金よりも、欠損金のほうが多ければ、その残高は翌期に繰り越されます。 ※平成27年度税制改正により、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。
大赤字を出して、例えば、5000万円くらいの赤字を出せば、翌期以降の毎年の税額が仮に500万円だったら、欠損金を10年間繰り越すことができるので、10年間は税額がゼロってことですね。 単純に計算すれば、こうなりますね。
では、欠損金の繰戻し還付と欠損金の繰越控除、2つの違いは何でしょう? 欠損金の繰戻し還付制度は、前の期に支払った税金を返してもらうもの。 欠損金の繰越控除制度は、翌期以降の税金を減らしてもらうもの。 ということです。
前期1000万円支払った税金を今期に返してもらうか(還付)、翌期1000万円支払うべき税金を支払わずに済ませてもらうか(欠損金と相殺)、の違いですね。
前期は利益が発生したけれど、当期以降は長期的に利益の発生(黒字化)が見込めない場合や、直近の資金繰りをよくしたい場合には繰戻還付を選択した方が有利になるといえます。 |
【注意点】
1. 地方税には繰戻還付制度はない・・・繰戻還付制度は法人税のみに適用される制度であり、地方税にはありません。 2. 税務調査の可能性もある・・・税務署長は還付請求があった場合には、調査をした上で、還付を行うか、請求の理由がない旨を書面で通知することになっています。 ただし、必ず実地調査が行われるというわけではなく、税務署内部における机上調査で済まされる場合もあります。 ≪参考≫ 税務署長は、還付請求書の提出があつた場合には、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する(法80条6)。 |
【どんなときに??】
≪しばらく利益が出そうにないんですけど、、、赤字が続きそうだ≫ 「繰り戻し還付」を受けたほうがいいですね。 特に長期間にわたって黒字化が見込めないようであれば、今後マイナス分を取り戻す機会がなくなるため、当期において「繰り戻し還付」を受けるべきですね。
≪少しでも当面の資金繰りをよくしたいんですけど、、、≫ この場合も、「繰り戻し還付」を受けたほうがいいですね。還付を受けることができれば資金繰りが改善されるため、「繰り戻し還付」を受けるメリットは大きいです。 資金繰りが厳しい企業はまず手元資金及び当面の資金繰りを優先して考えてみてはいかがでしょうか。 |