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法人契約の生命保険|低解約返戻金型逓増定期保険の名義変更
水曜日, 2月 10th, 2016法人契約の生命保険で名義変更を前提とした低解約返戻金型逓増定期保険の税務上のリスク
外資系の生命保険会社が中心となって、販売されている「低解約返戻金型逓増定期保険」の税務上の取り扱いが問題となっています。
低解約返戻金型逓増定期保険の最大の特徴は、大幅に変動する解約返戻金の返戻率にあります。契約時から一定の期間中は払込保険料の20%程度に抑えられている一方で、一定期間経過後は払込保険料の90%以上にまでアップします。 税務上、問題視されるのは、解約返戻金が低額に設定されている期間に、契約者を法人から個人に名義変更したケースです。 所得税の基本通達では、名義変更された場合の保険契約の権利の評価は、解約返戻金の額とされています。
しかし、この保険商品の性質を考えると、名義変更時の解約返戻金の額が、個人の受ける経済的利益の額として評価することは、不合理とされる可能性があります。 一般的に、この低解約返戻金型逓増定期保険は、法人が契約者となって、保険料の2分の1を損金計上できるように設計されています。この保険商品について、税務上、特に問題視されるのは、低解約返戻期間中に法人から個人(役員)へ名義変更された場合の役員個人の所得税です。 |
【契約内容例 ⇒ 契約者:法人、受取人:法人、被保険者:代表者役員、保険期間20年、年間保険料1,000万円】
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 |
解約返戻金 | 0円 | 100万円 | 300万円 | 800万円 | 4,750万円 |
返礼率 | 0% | 5% | 10% | 20% | 95% |
法人契約の保険商品を役員などの個人に名義変更する場合、無償でその権利を移転させたり、または、売却することも考えられますが、その保険契約に関する権利の評価は、所得税の基本通達36-37では「解約返戻金」の額となります。
低解約返戻期間の最終年である4年目に法人から役員に名義変更をします。評価額は解約返戻金の額の800万円ですから、役員が法人へ800万円を支払います。 そして、役員が5年目に当該保険契約を解約した場合に、役員が受け取る「解約返戻金」に係る一時所得の課税対象金額は、下記のとおり、1450万円となります。 ①解約返戻金4,750万円―(法人へ支払った800万円+保険料1,000万円)=2,950万円 ②(2,950万円―特別控除額50万円)×2分の1=1,450万円⇒課税対象金額 1,450万円の所得に対する税率は33%で、速算表に基づけば所得税は約320万円となります。 もし仮に、法人が役員に対して4,750万円を給与として支給した場合の所得は、4750万円―給与所得控除230万円(H28年度)=4,520万円となり、速算表に基づけば所得税率は45%で所得税額は1,500万円を超えてしまいます。 つまり、給与で支給した場合よりも、一時所得としたほうが所得税の税負担が軽くなります。 この低解約返戻金型逓増定期は、そもそも法人が契約する時点で、法人が役員への名義変更を行い、役員が解約することを前提としていることが多いです。 所得税基本通達36-37により、保険契約の権利の評価を上述のとおりに解約返戻金の800万円としても、法人が払い込んできた保険料の累計額4,000万円や翌年の解約返戻金4,750万円を考慮すると、個人の役員が支払う金額の800万円が適正かどうかが問われます。 形式的には所得税基本通達に沿った形で課税処理を行う必要があります。 |
【まとめ】
この保険が問題とされるのは、返戻金が増える前年に契約名義を法人から社長など個人へ変更するケースです。 法人が年間保険料を払って、契約4年目がポイントとなります。法人は1年待って解約すれば4,750万円もらえると分かっていながら、4年目の解約返戻金の額(上記の例だと800万円で個人へ売却します)。 これは、国税庁が通達で、売却額は解約返戻金と同額と定めているためです。個人は5年目に1年分だけ保険料を負担しただけで解約すれば、4,750万円の返戻金を手にすることができます。 国税局関係者は税法の条文がない以上、形式的には合法と言わざるを得ないと回答しています。 「個別の事案は、税務調査で実態に即して判断することになる」と回答してます。個人の税務申告も必ず申告期限内に済ませることが大切です。 調査で租税回避と認定されれば、法人または個人が財産移転分を追徴課税される可能性があります。 個人の確定申告をすることは当然のことですが、一時所得の計算上、支払保険料の中に法人が支払った保険料の額を含めてしまっていたりすることのないように正しく確定申告をする必要があります。 |