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上場株式の配当|所得税と住民税の節税|総合課税と申告不要の届出

火曜日, 2月 20th, 2018

 

上場株式の配当にかかる所得税と住民税で、異なる課税方式を選択することにより節税する方法があります。

2017年度の税制改正を受けて事実上、可能になった方法です。税務署への確定申告と自治体への届出が必要ですが、ひと手間かければ税金を減らせるケースも少なくありません。

年金生活者や自営業者であれば社会保険料負担の軽減につながることもあります。

 

税制上、株式の配当は所得税(国税)と住民税(地方税)が別々に課税され、それぞれ有利な課税方式を納税者が選択できる仕組みになっています。

ところが実際には有利な方式を住民税で選択することは従来できませんでした。自治体側の税務対応が追い付かず、所得税で選択した方式が自動的に住民税に適用される体制になっていました。

 

これを是正するため政府は制度を改正しました。自治体の窓口に申し出た人は、有利な課税方式が認められるようになりました。2016年度の所得を基に計算する2017年度の住民税から始まっています。

 

【 パターン別に見た所得税・住民税の合計税率 】

パターンa  パターンb  パターンc
所得税(申告不要)  所得税(総合課税)  所得税(総合課税)
課税所得 住民税(申告不要)  住民税(総合課税)  住民税(申告不要)
~330万円以下 20% 7.2% 5%
~695万円以下 20% 17.2% 15%
~900万円以下 20% 20.2% 18%
~1,000万円以下 20% 30.2% 28%
~1,800万円以下 20% 36.6% 33%

 

まず、上記の表のパターンa です。

配当を所得税も住民税も申告しないパターンです。配当は受取時にいったん税金20%(所得税15%と住民税5%)分が源泉徴収されるため通常、改めて申告する必要がありません(申告不要制度)。

特定口座の利用者をはじめ投資家の多くはこのパターンに該当します。

 

次に、少数派のパターンb です。

総合課税を選択して配当を申告する方で、どちらかといえば少数派です。総合課税には「配当控除」という負担軽減の仕組みがあり、所得水準によっては税率が源泉徴収税率の20%より低くなり、パターンa よりも有利です。配当控除は法人税との二重課税を調整するためにある仕組みです。

 

そして、注目すべきパターンc です。

最近可能になった節税方法のパターンです。所得税は総合課税を選択して税務署に確定申告をします。そのうえで、市区町村の税務窓口に届出をして、住民税の扱いを申告不要とする方法です。

課税所得が900万円以下の一般的な水準の人で見ると、税率はa や b よりさらに低く、お得なことが確認できます。

例えば、課税所得が695万円超900万円以下の人の税率は、18%です(内訳は所得税13%と住民税5%)。所得税は総合課税を選択することで配当控除の恩恵を受けることができます。

住民税のほうは、申告不要の扱いとすることで源泉徴収税率である5%だけで済むのが大きいです。

総括すると、課税所得が900万円以下の人は、パターンc を選択するのがお得といえます。

 

 

【社会保険料の減額も】

より有利な方法であるパターンc があると知った方(80歳)が市役所を訪問して、配当を申告不要の扱いとする届出を提出し、住民税が減額されたケースがあります。

そして、さらに税金だけでなく、後期高齢者医療の保険料が年間で3万円近く減るというケースもあります。

75歳以上が加入する後期高齢者医療保険の保険料は、住民税の課税所得に連動する部分があります。所得割と呼ばれるもので、届出をしたことにより、課税所得に配当部分が上乗せされずに済み、結果として保険料負担が年間3万円近く軽減できたという例です。

所得割の仕組みは国民健康保険などにもあります。加入者は、節税と保険料軽減とセットで得をする可能性があります。

 

住民税を申告不要の扱いにしたほうが得をするケースは他にもあります。

例えば、複数の証券会社で「源泉徴収あり」の特定口座を開設して株式を売買している方のケースです。

利益と損失がそれぞれ出ている場合、そのままにせず、確定申告をして両口座間の損益通算を実行したほうが通常は良いです。源泉徴収されていた税金の一部が還付されます。これを申告分離課税といい、届出しなければ住民税も同じ方式になります。

ただし、国民健康保険などの加入者は、申告することで所得が増えて、社会保険料負担が重くなる恐れもあります。保険料が増えれば、税金還付額を考慮しても全体で負担増になりかねないですが、住民税を申告不要としておけば、保険料に響かなくて済みます。

 

届出の手続きは、市区町村によりますが、専用書類に記入したり、住民税申告書にチェックを入れたりします。詳細や不明点はお住まいの市区町村の税務窓口に問い合わせをしてみましょう。