役員報酬と役員賞与を活用した節税方法

節税の方法は大きく3つあります。

1.株主構成の変更

1つめは株主構成を変える方法です。

要件をよく見ると、適用になるのは業務主宰役員一族が発行済株式の90%以上を所有している会社、となっています。ということは、同族以外の第三者が10%超の株式を保有していれば、この制度の対象外になる、というわけです。

具体的には、社長一族が所有する株式を第三者に譲渡することになります。ただし、実務的にはこの方法はお勧めではありません。というのも、形式的に株式を移すだけでは租税回避行為とみなされる場合が多く、実行するにはリスクを伴います。また、そもそも株主というのは、税法のためだけに安易に変更するものではありません。

 

2.役員構成の変更

2つめは、役員構成を変える方法です。

この3つの中では、これが一番お勧めの方法です。具体的には、常務従事役員の過半数が社長一族である場合に、この規定の適用対象となりますので、社長一族が常務従事役員の50%以下であれば、対象外になるということになります。

例えば、社長1人、社長一族以外から1人の役員構成であれば、対象外です。具体的には、従業員を役員に登用する、というのが現実的に考えられる選択肢です。ただし、この場合には、役員としての法的責任、雇用保険に加入できないことなど、デメリット面もしっかり本人に伝えた上で実行しなければ、後でトラブルになる可能性もありますので、注意が必要です。

 

3.役員給与の配分変更

3つめは、役員給与の配分を変える方法。

この増税規定の対象になるのは、業務主宰役員(主に社長)の給与だけですから、社長給与を減らし、その分他の役員の給与を増やすことで増税規定の対象になる役員給与を減らすことができます。ただし、これもやみくもに行えば、当然租税回避行為とみなされてしまいますので、実態に合った範囲での変更に限ります。

 

 

役員報酬は、経費のなかでも大きな金額を占めます。節税を考えるに当たっては、この役員給与の基本的知識を身につけることが非常に重要です。特に役員給与については、ここ数年で大きな税制改正が行われました。

役員報酬は「定期同額」が原則

役員報酬については、2006年度(平成18年)税制改正において大きな改正が3つ行われました。

1「定期同額給与」の導入

まず、1つめが「定期同額給与」の導入です。

この改正によって、役員給与は毎月同額でなければ、原則経費として認められなくなりました。この改正以前は、「今期は少し利益が出たから、期中で役員給与を上げよう(?)」という会社もあったようですが、この改正によって、利益調整目的で期中に役員給与を上げる、ということはできなくなりました。

役員給与を変更できる時期は、原則、年に1回だけ。それは事業年度開始後3ヶ月以内に限られます。例えば、3月決算法人であれば、4~6月までの3ヶ月間。この期間に、今後1年間に支払う役員給与を決めてしまわなければなりません。中小企業においては、この役員給与の金額によって節税の大半が決まってしまう、と言っても過言ではありません。

では、期中に役員給与を上げ下げすると、具体的にはどうなるのでしょうか。例えば、3月決算法人の会社で、4~9月までの役員給与を50万円、10~3月までの役員給与を100万円に変更したとします。

この場合、定期同額給与として認められるのは50万円。10月から支払っている100万円の役員給与のうち、50万円は定期同額給与として経費計上が認められますが、それを超えた50万円は税金を計算する上では、経費として認められなくなります。

結果として、年間50万円×6ヶ月=300万円の役員給与が経費にならなくなってしまいます。こうならないためには、期首に今期の利益予想をしっかりと行って、適正な役員給与の金額を設定することが、節税の第一歩となります。

2「事前確定届出給与」

2つめは、「事前確定届出給与」です。

これは、1つめの「定期同額給与」の例外として設けられている制度です。通常、役員給与については「定期同額給与」の規定があるため、役員に賞与を支払ったとしても、その役員賞与は経費としては認められません。それを経費算入するための制度がこの「事前確定届出給与」です。

この制度を利用するためには、事前にいつ、どれだけの金額を支払うかを税務署に届け出ておかなければなりません。そして、実際にその時期に届け出た金額と同額を支払った場合に限り、その役員給与が経費として認められます。つまり、この制度により実質的には役員賞与が支給できるようになるのです。

ただし、この制度は事前に届け出た金額と全く同額を支給しなければ、支給した全額が経費として認められなくなってしまいます。そのリスクがあるため、実際にこの制度を導入されている会社は意外に少ないというのが実態です。

もし、事前に支払いたい役員賞与の金額が決まっているなら、それを含めた役員給与の年額を12で割って、毎月支給する「定期同額給与」ことをお勧めします。

3.「業務主宰役員給与の損金不算入」

3つめは「業務主宰役員給与の損金不算入」です。これは、業務主宰役員一族が発行済株式の90%以上を所有し、かつ常務従事役員の過半数が業務主宰役員一族である場合には、業務主宰役員給与のうち、給与所得控除相当額は経費として認められない、という制度です。

業務主宰役員とは通常は社長を指しますので、ほとんどの同族会社が上記の条件に当てはまってしまいます。

この制度の対象になると、社長の役員給与のうち、約2~3割が経費として認められなくなりますので、該当すると非常に影響が多い増税規定になります。例えば、年収1,000万円の社長の場合、この規定に該当すると、そのうち220万円が経費にならなくなります。

ただし、この制度が導入された翌年、2007年度(平成19年)の税制改正において、基準所得金額(簡単に言うと、社長給与を支払う前の会社の利益の過去3年平均)が1,600万円以下である会社については、この規定が適用されなくなりました。

 

 

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