建設業会計ソフトの必要性|工事台帳は会計ソフトから出力

建設業界では、よく「原価管理が重要だ」と言われています。しかし、実際、建設業の会社で行われているのは、「原価集計」に過ぎません。本当の意味での原価管理とは、「利益先行管理」つまり、今、決算を迎えれば最終利益はいくらになるのか、ということを毎月把握できていることなのです。

これだけパソコンが世に普及し、便利なソフトが登場しているにも関わらず、利益先行管理ができていないのは何故でしょうか?

その理由は、 「原価と会計の連動」 を無視しているためです。

建設業の経営者の皆様は、ほとんどの方が現場出身の方です。見積、発注、実行予算、支払査定、請求など現場サイドの事は重視されますが、その情報を会計(経理サイド)に提供することを軽視してしまう傾向にあります。

経理は、お金を取り扱う部門です。現金・普通預金・当座預金を使って、工事代金の入金や業者への支払いが行われます。

この現金預金の帳簿上の残高が実際の残高と一致し、工事代金の未収金、全ての業者への未払金の残高も請求書や領収書の内容と一致して、初めて損益(売上・原価・粗利)が正しい内容であることの裏付けとなるのです。

つまり、原価管理ソフトのみで業績の把握、儲かっているかどうかを判断することはできないということです。お金を取り扱う経理(会計)で残高の確認を行うことで、原価管理ソフトで入力された内容が正しいといえるのです。

また、せっかく原価管理ソフトを導入していても、会計ソフトが通常の財務会計ソフトを使用している会社があります。この場合、会社全体の業績しか解らず、現場毎の業績の把握、現場毎の入金管理、業者毎の支払管理ができません。

原価管理ソフトと建設業用会計ソフトとの簡単な流れは以下のとおりです。

①【原価管理ソフト】で「現場サイドの情報」を入力・登録

②「現場サイドの情報」を会計ソフトへ連動

③【建設業会計ソフト】で預金の他、工事未払金・未収入金・前受金の残高を現場毎、業者毎に確認

④修正・追加

⑤再度会計へ連動

⑥工事情報の確定(数値の信頼性)

ポイントは、原価と会計を切り離さず、セットで考えることです。

 

工事台帳などが会計ソフトから出力されますか?

建設業簿記の特徴は、原価科目にあります。原価計算から得られる数値を複式簿記に組み込むことが製造業の工業簿記から主勘定を取り除き簡素化を計った商的工業簿記と決定的に違うところです。

そして、原価管理こそが建設業の管理会計の最も重要な要素であり、原価を征するものが建設業の管理会計を征すると言っても過言ではありません。

例えば、建設業簿記には、工事原価にかかわる未成工事支出金、当期完成工事原価、建設仮勘定の三大主勘定に補助科目があることで、前受金、未成工事受入金、前渡金などを工事別に分類仕訳とする原則があります。

これを集計することで、建設業簿記特有の威力を発揮します。しかしながら手動で行うとなると、商的工業簿記に比べ、3倍〜5倍の労力を必要とします。

この他にも、建設業簿記の具体的な特徴のひとつである三表があります。

三表とは、

1. 実行予算管理表(完工原価の至近数値の予測)

2. 未成工事進捗表(計数出来高と現場出来高の対比、立替勘定の把握)

3. 工事別損益計算書(完工原価検収と実行予算表の対比)

の3種類です。

さらに具体的な特徴に、建設業を営む者は税法上、法人の事業概況説明書の他に下記帳簿類の保管義務の法制化があります。下記の条件を充たすには、建設業簿記で財務管理会計を行う必要があります。(法人の事業概況説明書等保管帳簿名記載)

1. 工事日報

《現業員が、年月日ごとに従事した現場名および工事名を就業時間に携わる自〜至までの主なる作業名を記載した日誌簿》

2. 工事台帳

《工事別に請負契約額・材料費・労務費・外注費・経費などを記載した台帳》

3. 見積台帳

《完成工事高・工事未払金・未払金・未払費用などの見積書控、または、綴り》

4. 工事契約書

《工事請負契約書・注文書・注文請書類の綴り》

5. 材料受払簿

《原材料・貯蔵品などの社内入出庫伝票》

6. 工事経費帳

《工事別経費が取引先・勘定科目・補助科目毎に摘要記載の帳簿》

7. 出面帳

《出勤簿・タイムカードなどで在職者の確認ができる帳票》

と、なります。

建設業会計の現状

まず、完成工事高(売上高)についてですが、これが未計上であれば、現場経費を原価とし、(本来は、未成工事支出金=資産勘定)前受金・未成工事受入金(負債勘定)も、完成工事高(売上高)として計上しています。

決算期末に洗替と称し、未成工事支出金(仕掛工事)を資産勘定に、前受金・未成工事受入金(出来高)を負債勘定に振替えます。最終段階の詰めに入るこの時点で、顧問先に未成工事(仕掛工事)の選択権を委ねます。

幸いにも建設業者の請求書は工事名が記載されていますが、それに伴う直接現場経費の材料費・外注費等の仕訳伝票には工事名の記載がなく、請求書などから適当に抽出します。

その後、税務調査のとき、調査官に未成工事支出金に現業員賃金手当の記載漏れを発見され、作業報告書の提出を求められます。

税務調査官は提出された作業報告書より、当該工事件名に従事した従業員の時数を抽出、実働時数で除算した後に、人工計算で労務費を総括します。

作業報告書がない場合は、法定労災計算資料に基づき契約金額の2割相当額を労務割合とみなし、進行基準額(出来高)で除算し修正申告に持ち込みます。

税務調査官は、未成工事支出金に記載されていない仮設経費・工具消耗品費・設計費・運搬費・租税公課・事務消耗品費・通信交通費・交際費・補償費・雑費なども決して見逃しません。

加えて、従業員賞与・法定福利費・福利厚生費・機械等経費・労務管理費・減価償却費・地代家賃・修繕維持費などの間接現場経費までが、修正申告の対照にされます。

ここで重要なことは、ただ単に税務調査対策ではなく、建設業簿記本来の会計業務を行うということです。

その結果として、当期完成工事高の間接現場経費より、当該未成工事支出金に間現場経費が移行され、必然的に営業利益が増額します。

小零細建設業者ほど顧問税理士に会計業務を委託することが多く、合計残高試算表を一例に挙げれば、3ヶ月程度の遅れは珍しい事ではありません。仮に、次月に月次合計残高試算表(貸借対照表・損益計算書)が確定されても、仮定の損益計算書であり、信頼に値する帳票ではありません。

通常、税理士に委託する会計業務は、決算申告月までに損益が確定するのが大半であり、赤字決算ともなれば、官公庁指名業者は取り返しのつかない結果となり、粉飾決算を余儀なくされます。

その結果、税務調査官の引継事項(ブラックリスト)に記載され、税務署の関心を引くことになります。万が一にも納税証明書に重加算税が記載されれば、官公庁の指名停止は免れません。

 

 

 

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