交際費枠5,000円基準なら全額費用|交際費の範囲

2006(平成18)年4月1日以後に開始する事業年度から、1人当たり5,000円以下の飲食費については、一定要件のもと、全額費用とする改正がありました(つまり、交際費にしなくてもよいということ)。これが「1人当たり5,000円基準の交際費」といわれる新たな交際費枠です。

この制度は、資本金1億円以下の中小企業はもちろんのこと、資本金が1億円を超える会社、上場企業までも対象になります。資本金が1億円超の法人はこれまで支出交際費は全額費用にならなかったのですから、この制度は節税に使えます。節税効果を受けるに当たっては、客観的な証拠として下記の書類を保存する必要があります。

交際費の範囲から、1人当たり5,000円以下の一定の飲食費を除外する要件として、飲食その他これに類する行為(飲食などという)のために要する費用について、次に掲げる事項を記載した書類を保存する必要があります。国税庁ではこれらを記載するフォームについて定めていませんので、オリジナルで作成することになります。記載項目は、以下の5点です。

(1)その飲食などのあった年月日

(2)その飲食などに参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者などの氏名または名称及びその関係

(3)その飲食などに参加した者の数

(4)その費用の金額並びにその飲食店、料理店などの名称およびその所在地(注)店舗を所有しないことその他の理由によりその名称またはその所在地が明らかでない場合は、領収書などに記載された支払先の氏名もしくは名称、住所もしくは居所または本店もしくは主たる事務所の所在地

(5)その他参考となるべき事項(支払金額÷合計人数=1人当たり支払金額など)

 

「なんだか面倒そう……」と思われるかもしれませんので、簡単に管理する方法をお教えします。

領収書に当社及び先方の出席者名、先方との関係(得意先、仕入先、株主など)、参加人数を書きます。これだけです。支払金額を参加人数で割り、5,000円以下であれば、この交際費は全額費用にできるのです。この簡単な作業をできるかどうかがポイントです。

経理担当者がいるような中小企業では問題ないでしょうが、社長1人ですべてを管理しているような会社であっても、これだけはしていただきたいと思います。

1人当たり5,000円以下の飲食費を活用して節税に活かすためには、いくつかの注意すべきポイントがあります。

(1) 社内交際費を除く

社内の者だけの飲食費は除かれます。仮に接待する相手である得意先などが1人であっても、その飲食に自己の従業員が多数参加しなければならない必要があったのであれば、社内交際費に該当しません。

(2)消費税は経理処理によって異なる

1人当たり5,000円以下になるかどうかの金額基準は、法人が税込経理方式または税抜経理方式のいずれを採用しているかにより異なります。税込経理方式の場合、税込み5,000円が基準となります。節税を考えると、税抜経理方式が有利となります。

(3)飲食費に限定

「5,000 円基準」は、交際費のうち飲食費に限定されています。飲食費に含まれる費用として、テーブルチャージ料・サービス料、飲食店で食事後に持ち帰るお土産代などの費用があります。飲食費に含めなくてもよい費用は、得意先の送迎費用、贈答品として渡すお土産代(前述のお土産代とは異なる)などがあります。

税務調査では、法人自ら交際費勘定としているものは、内容が不明なものを除き、あえて調査官は詳しく追求しません。調査官は、交際費勘定としていない他の勘定科目について調査し、交際費課税できるものがないかどうか目を光らせているのです。そこで、中小企業において見受けられる関連科目との注意点をみていきます。

1. 福利厚生費

従業員全員を対象とした忘年会の費用は福利厚生費ですが、そのあと有志のみ参加する2次会費用は交際費となります。

2. 会議費

会議に際して提供する茶菓や弁当は会議費にできます。なかには、3,000円ぐらいの飲食費ならば会議費にできると勘違いされている経営者もいるようですが、そのような基準はありません。ちなみに、社内会議費については社外の人が含まれませんので、5,000円基準の適用はありません。

3. ゴルフ代

業務に関連する社外コンペ代は交際費となり、業務に関係のない(プライベートと判断されるもの)社外コンペ代は給与となります。では、社内コンペ代は福利厚生費でしょうか?従業員を対象とする慰安のための社内コンペ代を会社が負担した場合、社内交際費または給与として取扱います。ゴルフを嗜む人が増えたといっても、一部の従業員しか参加できないと考えるからです。また、役員だけのコンペ代については、社内交際費というより役員賞与に認定されてしまいます。

中小企業の場合、年間600万円までは支出交際費の90%は費用となります。また、「5,000円基準」を活用することにより支出交際費が全額費用にできます。交際費を利益に貢献させるために賢く活用しましょう。

 

みなさんご存知のとおり、法人が支出する交際費は原則として全額費用にはなりません。かといって現実問題として、わが日本には中元歳暮を贈る慣習もありますし、酒席は人間関係のある意味潤滑油の要素も否定できません。交際費が費用にならないからといって、支出しないわけにはいきません。

そこで、税法では日本の企業数の約99%を占める中小企業に配慮し、資本金1億円以下の中小企業について特例を設けています。中小企業の場合、600万円(改正前は400万円)以下の交際費については90%を費用とし、10%だけを費用としないとされています。このことを、税法の用語で「交際費の損金不算入」といいます。費用にならない場合は、税理士などがよく「損金になりません」と言うのを聞かれたことがあるはずです。

期末資本金が1億円以下の法人の損金不算入額は、

・支出交際費の金額が年間600万円以下の場合は、「支出交際費の金額×10%」

・支出交際費の金額が年間600万円超の場合は

、「(支出交際費の金額(600万円)-600万円×10%」

注意:事業年度が1年に満たない場合には、600万円の定額控除限度額を年換算します。

期末資本金が1億円超の法人の損金不算入額は、支出交際費の金額となります。

 

税法上の交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用のこと。ただし、次に掲げる費用は交際費などから除きます。

1.専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行  などのために通常要する費用

2.飲食などのために要する費用(専らその法人の役員や従業員などに対するものを除く)であって、その支出する金額を飲食などに参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用

3.カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなど広告用物品を贈与するために通常要する費用

4.会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用

5.新聞雑誌などの出版物、または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用

 

2009(平成21)年6月に最近の社会経済情勢を踏まえ、中小企業の定額控除限度額が改正されました。2009(平成21)年4月1日以後に終了する事業年度から、資本金が1億円以下の中小企業については、交際費の定額控除限度額が400万円から600万円に引き上げられました。具体的にみていきましょう。

例えば、資本金3,000万円、事業年度4月1日~翌年3月31日、年間の交際費の額500万円の場合、

・改正後の損金不算入額 500万円×10%=50万円

交際費損金不算入額に対する法人税など 50万円×35%=17.5万円

(実効税率35%で計算)

・改正前の損金不算入額(500万円?400万円)+400万円×10%=140万円

交際費損金不算入額に対する法人税など 140万円×35%=49万円

したがって、49万円-17.5万円=31.5万円もの節税

となります。

 

 

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